任せたいのに任せられない。任せられているのに動けない。
海外現地法人がうまく回らなくなる典型的なパターンは、意思決定の権限が本社に集中し、現地が「判断待ち」の状態で止まり続けることです。現地スタッフの能力の問題ではなく、権限設計と報告ラインの問題です。
現地法人の責任者は思っています。「めまぐるしい決定に追われる日々、なぜ毎度日本本社にお伺いを立てる必要があるのか」
人事のこと、取引先のこと、オフィスの備品のこと——現地の事情を一番わかっているのは自分なのに、実際的な決裁権がない。本社に説明を書き、承認を待ち、タイムゾーンの差で1日ロスする。その間に、現場は止まる。
本社の側にもフラストレーションがあります。「任せたい。でも任せた結果どうなるかが見えない。」報告は来るが判断材料にならない。数字は出てくるが、その数字が何を意味しているのかわからない。
だから手放せない。手放せないから現地が育たない。育たないからますます手放せない——この循環が、何年も続いている。
そしてこの板挟みに放り込まれるのが、赴任した日本人自身です。言語が違い、文化が違い、法律が違い、生活インフラの常識が根本的に違う。たとえば若い人の一人暮らしなら洗濯機がない家は普通、という国です。空気が違い、食べ物が違い、仕事以前に脳がフル稼働している。その状態で、本社からは成果を求められ、現地からは判断を求められている。